子宮蓄膿症

今回は避妊手術で卵巣と子宮を摘出していないわんちゃん猫ちゃんに発生する、死にも繋がる救急管理が必要な子宮蓄膿症について紹介します。

どんな病気?

子宮の中で細菌感染を起こし膿が溜まる病気です。若くても発症しますが、比較的高齢の赤ちゃんを産んだ 事のないわんちゃんに多く見られます。子宮内で増殖した菌は内毒素を発生させ全身に強い炎症反応を引 き起こします。そして脱水や中毒症状、腎不全、肝不全、低血糖、敗血症などを起こし生命を脅かします。子宮頸管という子宮の出口が開いているタイプ(開放性)と閉じているタイプ(閉鎖性)がありますが、閉鎖性 は膿が排出されないため症状が重くなります。閉鎖性では膿の蓄積で子宮がパンパンに張って破裂する事 があり腹膜炎を起こします。

発症する時期としくみは?

犬は発情出血から 1、2 ヶ月後に発生することが多いです。これは発情すると黄体ホルモンが多く分泌されるのと関係しています。このホルモンは、精子が進入しやすいように子宮頸管という子宮の入口をゆるくし、精子が定着しやすいよう子宮の内膜を刺激し分厚くし、子宮の筋肉の活動を低下させ、子宮の免疫バリアを低下させるのですが、これは同時に外部からの菌の侵入と定着を許しやすくします。原因菌は肛門や膣などに通常でもいる常在菌(大腸菌のことが多い)です。

猫は?

猫は交尾がないと排卵しないので、犬のように定期的に黄体ホルモンを長く分泌することがありません。このため犬よりも発生は少ないですが、最近は交尾がなくても自然排卵する猫が 4 割ほどいると言われているため注意が必要です。

症状

食欲不振、発熱、嘔吐、多飲多尿、お腹の張り、陰部から膿が出るなど

治療

第一選択は外科的に卵巣と子宮を摘出する事です。避妊手術と同じ手技ですが、リスクは比べ物にならいほど高くなります。進行が速いためすぐに実施が必要です。状態が悪い場合はまず、輸液療法と抗生剤を使用して脱水や敗血症などを補正してから手術します。内科療法としてホルモン剤を使用して子宮を収縮させて膿を排出させる方法があります。しかし内科療法は治癒するとは限らず、再発も多いので実施は少ないです。

予防

若い時の避妊手術で完全に防ぐことができます。避妊手術により以下の病気も予防することができます。

  • ⚫ 卵巣と子宮の腫瘍
  • ⚫ 乳腺腫瘍
       ・犬の乳腺腫瘍予防効果:初回発情前の避妊 99.5%、2 回目発情前の避妊 92%
       ・猫は 9 割が悪性
       * 猫の乳腺腫瘍予防効果 1 年以内の避妊 86%

早めの避妊手術で乳腺腫瘍の予防効果が高まるにゃ

犬猫に閉経はないにゃ